「振り込め詐欺にかかりやすい人を診断する5つの質問と防止法」


○ 自らの心の底を見つめれば 振り込め詐欺は防止できる


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ゆうさんごちゃまぜHP「狂歌教育人生論」        2013年 12月 20日(金)第 160号


 お寒うなりました。いかがお過ごしでしょうか。
 ついこの間一月になったと思ったら、あと十日ほどで今年も終わりです。
 歳をとるに従ってゆるやかな川の流れは急流に変わったようです(^_^)。

 さて、今年を締めくくる狂短歌エッセーとしていろいろ書こうと思いました。
 自分の不甲斐ない状況とか実家前の道にバイパスができて静かになったチョーローカルな話題とか(^_^;)。しかし「風が吹けば桶屋」のように、そこから議員や議会について考えたこととか。
 大きな話題では戦争をやめようとするTPPについて書こうか。逆に戦争をやりたくて仕方ない秘密保護法、集団的自衛権、憲法改正への流れ。多数派のテロについて書こうとか……。
 ところが、書き始めたらいずれも長文となって「この師走の忙がしいときにお前は何を考えておるんじゃ」と言われかねません(^_^;)。

 そこで、それらは全て来年に回して今回は喫緊の課題である振り込め詐欺について書くことにしました。
 あれだけテレビで「注意して」と呼びかけられていながら、なくなるどころか一向に減る気配がありません。

 詐欺師たちの巧みなやり方、巧みな言葉にだまされてしまうことはあるでしょう。しかし、だまされてしまうこちら側にも深い深い心理と感情の根本理由があるように感じます。そこを書けるのは「感情研究家」を自認する私だけかもしれません。

 と思って……書き上げてみたら、やっぱりものすご〜く長くなりました(^_^;)。
 顰蹙(ひんしゅく)ものなので、以下のように小見出しをつくり、途中を飛ばしてもいいように配置しました。多忙な方は取りあえず印だけお読み下さい。

 ☆ 前置き
 ★ 振り込め詐欺にかかりやすい人を診断する5つの質問
 ★ 判定と解説
 ☆ さらに4つの質問と補足説明
 ★ 振り込め詐欺の感情論的防止法
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 (^_^)本日の狂短歌(^_^)

 ○ 自らの心の底を見つめれば 振り込め詐欺は防止できる

 (^O^) ゆとりある人のための10分エッセー (^O^)

 【 振り込め詐欺にかかりやすい人を診断する5つの質問と防止法 】


 ☆ 前置き

 振り込め詐欺は今年「母さん助けて詐欺」に名称が変わりました。おぼえていますか。新語流行語のベスト30にさえ上がらず、早くも死語になりかけている感じです(と書いて調べたらベスト30に入っていました^_^;)。 
 このネーミング、私はなかなか鋭いと感心しています。振り込め詐欺の多くは母と息子の関係で起こっていることが多く、この詐欺の本質を突いているように思えるからです。

 また、最近「ロトシックス」詐欺が広がりつつあります。「ロトシックスの当選番号を教える」と言って準備金(手数料?)の金を振り込ませるのです。被害額はすでに数千万に上っているとか。こちらは男性被害者が多いような気がします。
 マルチ商法に投資詐欺、一攫千金詐欺(これは私の造語)等々、人はなぜこうした儲け話に乗ってしまうのでしょうか。

 数日前振り込め詐欺について特集されたテレビ番組がありました。
 詐欺師グループの特徴は主犯、実行犯、金の受取人や出し子など組織化され、マニュアルがあって訓練を繰り返している。末端がつかまっても、主犯まで及ばないよう綿密に用心して運営されているなど、まるでビジネスになっているかのようです。
 さらに、実行犯の社員(?)に対して「確かにこれは犯罪だ。だが、貧乏人をだまして取るんではない。金持ちから1割をもらうんだ」と義賊気取りもあるようです。

 テレビの識者・コメンテーターは「これだけ振り込め詐欺に気を付けてと呼びかけているのに、どうして減らないのでしょう」とか「あやしい電話がかかってきたら、必ず警察とか親しい人に相談してください」と呼びかけています。
 しかし、いつもそこまでです。「呼びかけが広まらないわけ」について解説はありません。

 被害者の80パーセントは65歳以上の高齢者だと言います。脳科学者は「高齢者は考える力が衰えており、パニックに陥りやすい」からだと指摘します。
 とは言え、誰でも歳を取ります。老化を原因にあげられては(当たっているとしても)詐欺は防げないことになるでしょう。

 そもそも日本人が考える力が弱いのは「小中高で受けている教育のせい」と私はひそかに思っています。
 日本の教育が「考える力を身につけさせる授業ではなく、丸暗記してテストで高得点を取る教育になっている」と言えば、わかってもらえるかもしれません。
 まーこの件はまた別の機会に書くことにして、教育が変わるのを待っていても、高齢者に対する振り込め詐欺を減らすことはできません。当面どうすればいいか。それが求められています。

 私はもっと心の中を深く鋭く探るべきだと思いました。なぜ振り込め詐欺、とりわけ「母さん助けて詐欺」は減らないのか。心の奥の感情、そこから生み出される行動をいろいろ考えてみると、詐欺にかかりやすい人が抱える共通の感情があることに気が付きました。しかも、それは誰もが持つ普通の感情です。ここではそれを提示して詐欺防止法を考えてみたいと思います。

 そこで、まずあなたが振り込め詐欺にかかりやすいタイプかどうか、5つの質問を用意しました。
 題して[振り込め詐欺にかかりやすい人を診断する5つの質問]です。

 1245は男女全てに。3は特に息子を持つお母さんへの質問です。あなたが父親であるなら、「妻はどっちだろう」と考えてお答えください。
 なお、回答は「はい・いいえ」だけで「どちらとも言えない」はありません。よって、「どちらかと言えば、はい」「どちらかと言えば、いいえ」として○を付けてください。

 また、これらの質問と判定・解説に科学的統計的裏付けは一切ありません。「心理・感情」面から「詐欺にかかりやすいタイプ」を考えた上の質問であり、判定です。私の個人的独断的考察結果であることをお断りしておきます。

 では質問です(^_^)。以下5つの項目に「はい」か「いいえ」でお答え下さい。

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 ★ 振り込め詐欺にかかりやすい人を診断する5つの質問

1.あなたは世の中のこと、政治や社会のことに興味・関心がありますか?
  毎日一度はニュース(ワイドショー)を見ていますか?
    ・はい ・いいえ

2.あなたは低金利のせいで自分の貯金がちっとも増えないことに不満を抱き、
  不愉快なことと感じていますか?
    ・はい ・いいえ

3.あなたは他の誰より――夫よりも、息子のことを愛していますか?
    ・はい ・いいえ

4.あなたには親しい知人友人がいますか?
    ・はい ・いいえ

5.4で「はい」と答えた方へ。
  あなたはその人に自分や家族の悩みを打ち明けていますか?
    ・はい ・いいえ

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 いかがでしょう。
 2はほぼ全ての人が「はい」に○をしたのではないでしょうか(^_^)。また、3はちょっと踏み込まれたくない心の奥を問う質問かもしれません。
 しかし、正直にお答え下さい。ご主人がそばにいらっしゃるなら、彼はあなたをどう見ているか、聞いてみるのもいいと思います(^.^)。
 この質問は読者がご主人なら「あなたの奥さんは夫より息子(子ども)のことをより多く愛していると思いますか」に置き換えられる質問でもあります。

 そして、以下はこの5項目について「詐欺に引っかかりやすい人かどうか」の診断結果です。


 ★ 診断と解説

 1に「いいえ」と答えた人は振り込め詐欺・悪質商法にかかりやすいと思います。
 なぜなら、ニュースを見ないあなたは世の中で今どのような詐欺や悪質商法が横行しているか、知らないからです。あなたには「これは詐欺かもしれない、悪質商法かもしれない」と疑うだけの知識がなく、心構えもありません。だから、あなたは詐欺に引っかかりやすい人です。

 2に「はい」と答えた人は「投資系詐欺・マルチ商法・一攫千金詐欺」にかかりやすいと思います。特に強く激しく感じている人は要注意です。
 なぜなら、あなたは100万の貯金がちっとも増えないことに、苛立ち腹を立て「この金が150万にならないかなあ、200万にならないかなあ」と常々感じているからです。そして、もしも持ちかけられた投資や一攫千金話に乗って100万が200万になって返ってきたら、あなたはさらに1000万を使う人だからです。

 3に「はい」と答えた人は特に「母さん助けて詐欺」にかかりやすいと思います。
 なぜなら、あなたは息子の不祥事・一大事に対して真っ先に駆けつけ、自分を捨ててでも助けようとする人だからです。あなたの息子への愛が深ければ深いほど、もしかしたら詐欺かもしれないと思っても、「まずは息子を助けなきゃ」と思って貯金をおろすでしょう。息子を最も愛しているあなたは「母さん助けて詐欺」に最も引っかかりやすい人です。

 4に「いいえ」と答えた人は全ての詐欺にかかります。相談する人がいないのですから当然の帰結でしょう。あなたに必要なことは相談できる知人友人をつくることだと思います。「今さらつくれない。無理だよ」とおっしゃる方は[★詐欺防止法]をしっかり読んで下さい(^_^)。

 5に「いいえ」と答えた人はやはり詐欺――とりわけ母さん助けて詐欺にかかりやすいと思います。
 なぜなら、知人友人がいたとしても、あなたはその人に心を開いていないからです。「母さん助けて詐欺」のほとんどは息子が起こす不祥事です。普段から自分のミスや過ち、人に話したくない家族のもめ事を打ち明けていなければ、突然起こった事件も話すことができません。
 むしろあなたは息子の不祥事を隠そうとするでしょう。だんなさんに対しても隠すかもしれません。夫に話すと「放っておけ」と言われるからです。こうなると、相談する人がいないのと同じことです。よって、友人がいたとしても、自分の心を開こうとしないあなたは詐欺に引っかかりやすい人です。

 いかがでしょうか。心の奥を探ってみれば、いかにも詐欺にかかりやすいタイプではないでしょうか。

 さて、年の瀬で多忙だし、これ以上の解説不要と思われる方は「★ 詐欺防止法」に進んでください(^_^)。「よくわからない。どうしてそう言えるの?」と思われる方、あるいは時間に余裕のある方は続いて以下の解説をお読み下さい。


☆ さらに4つの質問と補足説明

 さらなる解説の初めに、このような質問と解説をつくって「御影さんはさぞかし堅実な方で、詐欺なんぞにかかったことはないんでしょうね」と思われるのも心外(^.^)なので、あえて告白します。
 私は一つの詐欺に引っかかって1万円を失い、詐欺まがい商法でも1万失い、マルチの片棒をかつぎそうになったことが1回あります。マルチの方は以前書いたことがある(63号「ネズミ講式販売法を考える」)ので、ここは引っかかってしまった恥ずかしい詐欺体験について書きます。

 それは関東某県に住んでいた三十代半ばのことでした。アパートの郵便受けに入っていたチラシ[10本格安1万円、無修正ウラビデオ!]に申し込んだのです(^_^;)。VHSの時代でした。

 当時九州の某県某歓楽街にあるビデオショップでは本物の無修正ウラビデオが売られており、私はそれを高値で入手したことがあります。「もう関東でも本物が売られているかもしれない。1本千円なら格安だ」と思って申し込んだのです。もちろん商品が届いてから金を払う代引きでした(これ中身を確認する前に金を払わねばなりません)。

 ところが、箱を開いてみたら中身は真っ赤なニセ物(単なる表のエッチビデオ。それも1本10分程度の粗悪品)でした。
「ニセ物じゃないか」と抗議して着払いで送り返したら、
「あと1万円出してくれれば、間違いなく本物裏ビデ30本を送ります」と返事が来ました。
「ああこれはだまされたんだ。これが2万、3万、4万と増えていく初めなんだ」とわかってやめました(^_^;)。
 ちなみに、金も返事も出さなかったら、後日最初の10本がまた送られてきました。ある意味律儀(りちぎ)なやつです。
 なので、私の手元には表の粗悪ビデオ10本が残り、やがてひそかにゴミ袋に入れられました。

 それはさておき、ここでは上記のように4つの質問に絞りました。
 それだけでなく、他にも「詐欺にかかりやすい人」をあぶり出す質問を作ることができます。以下列挙してみると、

 [詐欺にかかりやすい人を診断する4つの追加質問

6.携帯・固定電話を持っていますか?

7.各種アンケートや懸賞に応募して自宅の住所・電話番号、自分や家族の情報をハガキに書き込んだことがありますか?

8.テレビショッピングで「30分以内にお申し込みいただければ値段は半額になります」とか「限定五百ヶの特別品です。今すぐお申し込み下さい」に反応してすぐに電話をかけたことがありますか? バーゲンセールで格安品が売られていると、人を押しのけてでも手に入れようとしたことがありますか?

9.(夫と妻の家庭で)奥さんが家計の主導権を握り、貯金の出し入れは奥さんがやっていますか?
  あるいは、だんなさんが家計の主導権を握り、貯金の出し入れはだんなさんがやっていますか?

 これもうなずける特徴ではないでしょうか。
 母さん助けて詐欺の全てと言っていいでしょう。最初にかかるのは一本の電話です。
 息子から「電話番号が変わった」と。そこから事件はスタートします。
 10年前の振り込め詐欺は当初息子とお母さんだけの会話でした。ところが、今は[劇場型]と言ってそこに警察官とか弁護士などが登場します。彼らとの会話は全て電話の中で行われます。実際に会って話をすれば、「どこかおかしい」と気づいたりするものです。けれども、電話の中では気づきにくい。だから、電話を持っていなければ、この詐欺にはかかりません。

 また、7のように、自分の情報を自ら進んで提供している人は個人情報を詐欺師・犯罪者グループに渡しているようなものです。当然のように詐欺師・悪質商法集団から電話がかかってくるでしょう。
 では、自ら進んで個人情報を提供していない人は大丈夫でしょうか。いや、我々の基本情報はすでに詐欺師の手に渡っていると考えた方がいいと思います。

 かつて個人情報が紙に書かれていた時代、今のような組織的詐欺はほとんどなかったろうと思います。詐欺師は地道に細々と稼いでいたでしょう。
 しかし、今や全ての個人情報はパソコンの中に入っている時代です。国や自治体、年金・医療・保健関係……民間でもカード会社、スーパーにネット販売。小売店のポイントカードでさえ、申し込むときに氏名・住所・電話番号、下手すると家族構成まで書かされます。彼らが保持している膨大な個人情報もフラッシュメモリー1ヶで持ち出せます。高値で買うやつがいます。

 もちろんそんなことをやれば犯罪ですが、金に困っていれば、情報で金を得ようとする人は必ず現れるでしょう。なんらかの事故で個人情報はしょっちゅう漏れています。クラッカー(パソコン系犯罪者)は関係機関のパソコンに潜り込もうと一日中キーボードの前に座っています。

 むしろこれだけ個人情報が散らばっている以上、「自分や家族の情報はすでに詐欺師グループに渡っている」と考えた方がいいと思います。つまり、私たちはみな詐欺師のターゲットになっているということです。

 8のテレビショッピングの例は「冷静に考える」ことなく、すぐパニックに陥りやすい人であることを表しています。
 実は私、これも体験者です(^_^;)。
 私は昔から腰痛持ちでマッサージチェアが欲しいなあといつも思っていました。しかし、本物は10万、20万もします。とても手が出ないと言うか、そこまでして欲しいとは思いませんでした。
 あるときテレビショッピングで「格安1万円の折り畳み式マッサージチェア」が販売されていました。作りはちゃちに見えたけれど、充分マッサージできる商品のように見えました。それが1万ならかなり安い。私は番組を見て即座に注文しました。

 一週間後商品が届きました。使ってみたら、確かにマッサージはできました。しかし、音と震動がかなり激しく、安アパートではとても使えないしろものだとわかりました。結局、使ったのは2回だけ。その後押入に仕舞われ、やがて粗大ゴミとして捨てられました(-.-)。

 それ以後、テレビショッピングで買いたいなあと思ったときは「こうしよう」とルールを決めました
 それは「一週間経ってやっぱり買いたいと思ったら、電話しよう」と。
 そもそも「今すぐ買えば……」式のテレビショッピングは毎日同じことをやっています。1週間経っても優遇策は変わらないから、待っていいのです。
 このルールを作ってから、見るたびに「買ってみたいなあ」と思う健康器具は一切買わなくなりました。一週間経って振り返ると「たぶん使わなくなるだろう」と思えるからです(^_^)。

 そして、9のように奥さんが家計の主導権を握っていると、母さん助けて詐欺にかかりやすく、逆にダンナが家計の主導権を握っていると、投資・マルチ・一攫千金詐欺にかかりやすい家庭です(^.^)。
 理由は単純。貯金1千万をいつでも自分が引き出せるからです。夫婦が疎遠になっていれば、伴侶に相談することなく貯金をおろして詐欺師に渡すでしょう。

 ここまで読まれて「わかった。もうこれ以上読みたくない。それじゃあ誰でも詐欺に引っかかるじゃないか」とお怒りになったなら、私は「そうだと思います」と言わざるを得ません。

 では、電話を、携帯をやめるのでしょうか。氏名・住所を書かれることを求められたとき、断るのでしょうか。断るとポイントカードはもらえません(最近はもらえるところも多いようです。「じゃあ要らない」と言う人が増えているからでしょう)。

 景品が当たる懸賞に応募することを楽しみにしている人もいらっしゃるでしょう。まめにハガキを出していると、結構当たるそうです。その楽しみをやめるのか。
 そもそも、家計を奥さんかご主人のどちらかにすることはほぼ全ての家庭で行われていることでしょう。それらを「詐欺に引っかからないためにやめる」選択はないと思います。
 大切なことはやめることではない。知ることだと思います。我々はいつでも詐欺師のターゲットになっている。それを自覚することだと。

 要するに、我々の基本情報は全て詐欺師に知られてしまっていると思うことです。
 一人暮らしかどうか、何歳か。家族持ちならその構成は。借家か自宅か。貯蓄残高等々。あなたが今55歳で息子が15歳なら、母さん助けて詐欺の電話はかかってこない。息子が自宅にいるのだから。
 しかし、10年後あなたが65歳になったとき、息子は25歳。彼は家を出て働き始めた。お母さんは「やっと子育てが終わった。独立してくれた」とひと安心。
 そのとき「自分は母さん助けて詐欺のターゲットになった」と思うべきです。10年振り込め詐欺が続いて全く減らないということはそういうことだと思います。毎年毎年ターゲットは詐欺市場に供給される。そこから金をかすめ取ろうと虎視眈々狙っている奴らがいる。それを自覚することが振り込め詐欺防止の第一歩だと思います。


★ 振り込め詐欺の感情論的防止法

1 世の中のことに興味関心がなく、ニュースを見ない人へ。
 端的に言ってニュースを見ること。それが防止法になります。振り込め詐欺・悪質商法の話題はドラマではやっていません。お笑い番組、バラエティ番組でもやっていません。手口などをもっともよく紹介しているのは朝や夕方のワイドショーです。
 しかし、ワイドショーを見ていたとしても、スポーツや芸能の話題なら見る。けれども、政治や社会の話題になるとチャンネルを変えている人。それでは見ていないのと同じことです。やはりつまらないと思っても、ニュースを見る習慣をつける必要があると思います。

 ただ、現在働いている人は毎日必ずニュースを見ることは難しいかもしれません。朝早く出かけ、夜遅く帰宅してくたくたなんだから、つまらないニュースなんぞ見る気もしないでしょう。
 それでも、土日の空いている時間を利用すべきだと思います。テレビ各局は「1週間分のニュース」をまとめて提供しています。その中に振り込め詐欺や悪質商法の話題が出てきます。
 あなたが今四十代、五十代の働き盛りとして、それさえも「つまらない」と思って見なければ、その習慣はしっかり身に付くでしょう。それは退職後ヒマになっても続きます。朝と夜の時間はたっぷりできたのに、あなたが見るテレビはやはりドラマとスポーツとバラエティ番組ばかり。正に考える力はどんどん衰えていく。それでは振り込め詐欺にかかっても仕方ないのでは、と思います。

 2の「貯金がちっとも増えないことに不満を抱いている方々」へ。
 あなたは投資系・マルチ・一攫千金詐欺にかかりやすいと書きました。この被害者はある意味政府・金融当局の無策ぶりの犠牲者であるとも言えます。「無能無策」と書きたいところだけれど、遠慮しました(^.^)。

 二十数年前、100万を郵便局の定額貯金に10年預けていると200万になって返ってきました。銀行でも150万にはなったでしょう。その時代多くの人は株にも投資にも手を出さず、一攫千金詐欺にもあまりかからなかったと思います。10年で2倍になるなら、それだけで充分楽しい老後が送れるからです。

 しかし、この10年間、100万を10年預けても雀の涙くらいの利子しかつきません。物価が上がれば、100万は100万の値打ちがなくなります。株や外債、FXに手を出してみたけれど、こちらは元本の100万を減らすばかり。将来への不安も増す。
 これでは砂漠で水をなくした旅人のように、いつも水に餓えているようなものです。詐欺師たちはあなたの心にすべりこんで「いい儲け話がありますよ」と舌なめずりでささやくのです。

 この感情にとらわれた人が詐欺や悪質商法にかからないようにするのはとても難しいと思います。なぜなら、水を飲みたくて仕方ない人の前に一杯の水が置かれるからです。誰が手を出さずにいられましょうか。

 ところが、実態はちょっと違います。この旅人をよく見ると、彼は背中に水がたくさん入ったタルを背負って歩いているのです。それなのに、水がほしい、水が飲みたいと渇(かつ)えています。

 この旅人が詐欺から身を守るには自分の姿を自覚すること――それしかないと思います。
 「なんとか貯金を増やすことはできないか」と常々感じていること、渇えていることを自覚すれば、儲け話にすぐ飛びつこうとする哀れな自分が見えるのではないでしょうか。

 そして、敢えて書きます。あなたが持っている背中の水を、少しだけ誰か――困っている人に分け与えてはどうかと。
 世の中には、世界には、詐欺にも悪質商法にも無縁の困窮者がたくさんいます。犯罪者集団はその人たちに声もかけません。
 私は思います。背中の水を分け与えている人は詐欺にかかっていないのではないかと。
 世の中に困っている人がいることを知っている。自分にできる範囲で助けようと思っている。それはイコール「世界に興味関心がある」ことを表しており、ニュースなどを見ている人と思えるからです。

 3の「はい」に○をした誰よりも息子(子ども)を愛しているお母さん方へ。
 あなたが「母さん助けて詐欺」にかからないための防止法はただ一つです。それは「ここで息子を助けることはほんとうに息子のためになるか。息子を愛することになるか」と立ち止まって考えることです。

 お母さんが息子に対して深い愛を持つことは悪いことでもなんでもありません。夫以上に愛しているなら、夫の側からするとなんとなくそれを感じ、やがて妻への愛がさめていく遠因となる……ことも敢えて触れません(^.^)。
 しかし、お母さんの深すぎる愛、過剰な愛はかえって《子どものためにならないこともある》と振り返るべきです。

 以下は以前メルマガで書いたことがある授業風景です。私は特に女子生徒に次のような質問をしました。
「君たちが将来お母さんになって子供が生まれ、その子がよちよち歩きを始めたとしよう。公園に出かけたら、歩いていたその子が転んでエーンエーンと泣き出した。そのとき助けるかい? それとも自分で立ち上がれって言うかい? どちらがいいんだろう」と。

 生徒の答えをさまざまに聞きだした後で私は正解を言います(これには正しい答えがあるのです)。

 もしも我が子が転んだときにしょっちゅう助けていたら、子どもは自力で立ち上がることをしないまま大きくなる。結果、困ったことがあったらいつもお母さんを頼る自立できない子に育ってしまう。
 でも、いつもいつも突き放していたら、この子は「自分の親はなんて冷たい人なんだ。ちっとも自分を助けてくれない」と思って愛を疑う子に育つ。だから、「あるとき助けてあるとき助けないが正しい答えなんだ」と話したものです(では、あるときをどうやって見分けるのか。詳しくは99号「いくつになっても人はつまずく」をご覧下さい)。

 息子が成長して自宅を出て働き始めたときも同じです。それは社会人となった息子がよちよち歩きを始めたようなもの。幼児が転ぶように、社会人となった息子もつまずいて転ぶことがあります。そのときの正しい選択も《あるとき助けてあるとき助けない》です。

 息子が「仕事に失敗して会社に数百万の穴を空けた」とか「交通事故で人を傷つけた。示談にするために今すぐ数百万の金が要る」とか「付き合っている彼女が妊娠した。中絶させたら二度と子どもが産めない身体になった。堕ろせと言った自分も慰謝料を払わなければならない」等々、せっぱ詰まった窮状を訴えてきたら、「今助けることは息子をほんとうに愛していることになるだろうか」と立ち止まって考えることです。

 息子は「母さん、今すぐ必要なんだ」とせかすでしょう。あるいは、わんわん泣くばかりで、警察や弁護士、医師が登場して実情を話してくれるでしょう。彼らは「お子さんのためです。すぐに必要です」と言います。

 それでも「ここで助けることは息子のためにならないかもしれない」とちょっと立ち止まるだけで、余裕が生まれます。その後の対応も変わります。あなたは冷静さを取り戻し、事態は「今すぐ金を渡さなければならない」状況ではないことに気づくでしょう。

 ここで一つ自分で決めておくといいルールがあります。「テレビショッピングで買いたくなったら、1週間待とう」のように。
 息子から「母さん大変なことが起こった。すぐに来て」と言われたなら、すぐに走っていく。
 でも、「母さん大変なことが起こった。すぐに金を送って」と言われたら、「準備するから明日まで待って」と答えることにしようと。そして、携帯の電源を切って友人のところに走って行きましょう。

 5で「はい」に○をした、友人に自分や家族の悩みを打ち明けていない方へ。
 あなたは人生をとても真面目に生きている人だと思います。苦しいこと、辛いこと、家族内のトラブルがあるのに、それを隠してけなげに生きている人かもしれません。
 あなたがもしもそういう人なら、やはり詐欺にかかります。いざというとき、友人に相談できないからです。あるいは、自分を取りつくろって真の姿を見せていない人も、やはり困ったこと、恥ずかしいことを友人に打ち明けられません。
 自分を隠して明るい顔を見せるのではなく、心を開いて友人に語ること。それさえできれば、あなたは息子の不祥事をすぐ相談できるでしょう。そのときあなたの話を聞いた友人は「大丈夫? それって母さん助けて詐欺じゃない?」と言ってくれるはずです。

 とは言え、知人友人に普段から自分の悩みや家族のトラブルを打ち明ける――これはなかなか難しく、勇気が必要です。相手が真面目に聞いてくれるかどうかも気になります。
 でも、あなたの悩みを笑うような友だちなら、縁を切った方がいいと思います。そう言う人は詐欺にかかりやすく、またマルチ商法にあなたを引きずり込むような人だから。

 それでも、なかなか実行できない人には一つ方法があります。
 それは架空の話、他人の話として友人に語ることです。「違う友だちのことなんだけど、その人がこんなことで困っているらしいの」と言って自分のこと、家族のことを語るのです。
 これには余得もあって他人のこととして自分のことを語ると、冷静に客観的に自分や家族を見つめることができるようになります。
 こうして普段から話す習慣がついていれば、いざというとき「我が家で大変なことが起こった。どうしよう」と相談することができます。

 以上、いくつか防止法を書きました。ニュースを見て詐欺や悪質商法の実態を知ること。個人情報はすでに詐欺師の手に渡り、自分は詐欺のターゲットになっていると自覚すること。今は何も働きかけがなくとも、10年後詐欺師から電話がかかってくると思うこと。それを防ぐ最大の味方は相談できる友をつくることであり、自ら心を開いて普段から自分や家族の悩みを話しておくことだと思います。

 最後に、振り込め詐欺は電話詐欺でもあります。それはテレビ電話が普及すれば、激減するでしょう。息子の顔を見ることができるから、直ちに「違う。息子じゃない!」とわかります。
 しかし、そのとき詐欺グループは新たな舞台をつくって我々に迫ると思います。彼らは息子さんの顔写真を手に入れ、3Dプリンターで息子さんのマスクをつくり、それを被ってテレビ電話の前に立つでしょう。あるいは、マツケンロボットのように精巧なロボットを手に入れ、息子さんの顔を簡単に成形してテレビカメラの前に置くのではないか。
 もはや振り込め詐欺はビジネスになりました。だから、経費がかかっても2倍3倍の利益が出るなら、彼らはやめません。
 詐欺をなくすには、やはりこちらが心の奥底を見つめ、自分の姿を自覚することだと思います。


 ○ 自らの心の底を見つめれば 振り込め詐欺は防止できる


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 最後まで読んでいただきありがとうございました。

後記: 原発について少々書きます。今年は原発が一つも稼働しませんでした。節電とか計画停電の恐れ、円安による燃料高騰に苦しむなど問題はあるけれど、これが原発0の状態なんだと実感できます。しかし、政府与党は来年再稼働に動くようです。
 また、最近出版された『原発ホワイトアウト』(著者若杉冽)なる小説が評判です。現役官僚が匿名で原発をめぐる利権とからくりを描いて相当衝撃的な内容とか。機会があったら読まれてはいかがでしょうか。これ、夕方のワイドショーで知りました(^_^)。

 さて、これで今年の狂短歌メルマガ配信は終了です。いつもいつも長文エッセーにお付き合いいただきありがとうございました。
 ときどき書いているように「おれの熱い思いは短文じゃあおさまらんのじゃあ」とつぶやきつつ、「短くする能力に欠けている」とも言えます(^_^;)。

 来年は私とみなさんと世界に「良いことがありますように」と祈って新年を迎えたいと思います。(御影祐) m(_ _)m  



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